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とある英雄譚のようです


リセマラが一番楽しいんですよ


>1


獣の使い手と呼ばれる一族。
彼らの名前が大陸に広く知られているのには三つの理由があった。

一つ目は、その身体能力。
生まれ持った強靭な肉体は龍族には劣るものの、世界最高レベルの戦闘力を有し、
森の中の障害物をものともせず自由自在に駆け回り、七日七晩眠ることなく動き続けることもできる。
集団、個別に限らず白兵戦闘で彼らと戦って勝つことができる種族はほとんど存在しない。

二つ目は、その特異能力。
世界に存在する数多の種族の中で、ごく一部だけが所有することを許された特異能力。
彼ら獣の使い手たちは、ありとあらゆる獣に対する支配権を生まれながらに持ち、
人間程度の大きさの動物であれば数十を同時に支配することもできる。
特に何の条件も必要なく、だ。

そして三つ目は、呪術師一族を相手取って戦争を繰り広げていること。
東の大陸の山林を治めていた獣の使い手は、そこに住んでいた呪術師の一族を追い出した。
それがきっかけとなり、長い戦争は幕を開けた。

当初は優勢だった獣の使い手に対して、呪術師たちは防戦一方であった。
戦況が覆ったのは、とある男が呪術師側に参戦をしたその日。

獣の使い手の一部隊をたった一人で、傷一つ負うことなく屠った男。
彼の存在は、そのあまりにも奇異な恰好のせいで両戦線に瞬く間に拡がった。

一般的な呪術師と同様に全身を黒で揃えてはいるが、
目深に被ったシルクハットと用途のわからないステッキ、
そして首元の白いネクタイが異様さを醸し出していた。

男は、死を呼ぶ呪術師であると怖れ、讃えられた彼は死術師と呼ばれた。

【+  】ゞ゚) 「あれは……骨が折れそうですね」

「い、良いから行けオサム! あの二人を殺せば我らの勝ちだ!」

男が戦線に加入してから、形勢は完全に逆転した。
戦うたびに勝利を重ね、残す獣の使い手たちの住処はたった一つ。
それを落とすべく、男を含んだ大隊は正面から攻め込んだ。

しかし、開幕の一撃でその戦力は半減させられてしまう。
呪術師の一族ですら耳にしたことのある、最強の敵。
その存在は神出鬼没。突如として戦地に現れ、ものの数分で小隊を全滅させてしまう実力者。

剛腕のフサギコ、神速のペニサス。
その二人の登場で、呪術師側の前衛部隊はほぼ壊滅した。
焦った指揮官は、それに対抗するために自陣の切り札を投入する。

ここに初めて、両陣営の最強が顔を合わせる形になった。

ミ,,゚Д゚彡 「お前が噂の死術師か……。確認の為に名前を聞いておこう」

【+  】ゞ゚) 「オサム・ローホと申します」

('、`*川 「私らのことは知っているんやろうね」

【+  】ゞ゚) 「存じ上げております」

ミ,,゚Д゚彡 「なら敢えて名乗る必要はあるまい。手加減ができる相手ではないと知っている。
       もとより、貴様らのような悪鬼羅刹にするつもりないが。全力で行かせてもらうぞ」

('、`*川 「踏みにじられた同胞の尊厳、その恨みを全てここで返させてもらうよ」

ミ,,゚Д゚彡 「覚悟はいいな、小僧!」

('、`*川ミ,,゚Д゚彡 「「リベレーション!!」」

獣族の本来の姿は、この世界に存在するだけで膨大なエネルギーを消費する。
そのため寿命が他の一族よりもずっと短く、
彼らは可能な限り長く生きるために、人間に近しい姿をして生活をしていた。
本来の姿でいる時間を減らすことで、寿命の節約に成功したのだ。

戦いに際して獣の姿を呼び覚ますということは、彼らにとって全力を出す必要があるという事。
目の前に立つオサムという男は、二人にとってそれだけ警戒すべき相手であった。

男は身体を二倍以上に膨らませ、針金のように硬そうな毛皮をその身に纏い、
女は長い尻尾を揺らし、鋭い牙を見せて唸りながら両手を前について四つん這いになる。

「ひぃ……っ」

【+  】ゞ゚) 「邪魔ですので、下がっていてください」

腰抜けの部隊長に対し目もくれずに言葉をやる。
それを最後まで聞くまでも無く、すごすごと引き下がっていった。

ミ,,゚Д゚彡 「行くぞ……」

フサギコの一撃は、地面を大きく持ち上げた。
飛び散った土塊の飛礫を防ぐために顔の前に差し出した手が死角を生み出す。
その一瞬の隙で背後まで移動したペニサスの鋭い爪は、漆黒の水面に弾かれた。
水面が波打ち、その衝撃があらぬ方向へと拡散される。

【+  】ゞ゚) 「ウクータ」

('、`*川 「これが呪術かい」

【+  】ゞ゚) 「それが本気でしょうか?」

('、`*川 「前見といたほうがええよ」

彼の意識が後ろに向けられてから、一秒すら経ってないにもかかわらず、
目の前で巨大な影がその腕を振り上げていた。

【+  】ゞ゚) 「っ!」

体格に似合わず俊敏なフサギコに驚きつつ慌てて飛び下がった彼は、
空中でペニサスの突進を受け数メートル先まで弾かれた。
オサムに立て直す隙を与えぬように、さらにフサギコの剛腕が唸る。

【+  】ゞ゚) 「ウクータ!」

ミ,,゚Д゚彡 「オラぁっ!」

【+  】ゞ゚) 「ぐぅっ……!」

黒き水面の盾はその膂力に対抗しきれず、その爪はオサムの腹を捉えた。
血液を飛び散らせながら地面を転がったオサム。
その頭を喰い千切らんとペニサスが大きく口を開いた。

【+  】ゞ゚) 「ムイーバ!」

黒きトゲがオサムの前面に拡がり、ペニサスは大きく飛び上がることでそれを回避した。
浅く無い傷口を押さえもせずに立ち上がるオサム。

【+  】ゞ゚) 「ごほっ……」

ミ,,゚Д゚彡 「貴様ら外道でも血は赤いのだな」

【+  】ゞ゚) 「はは……そうみたいですね」

('、`*川 「自分の血を見たのは初めてかい?」

【+  】ゞ゚) 「ええ、そうです」

ミ,,゚Д゚彡 「そうか、安心しろ。痛い思いも、血を見るのもこれで最後だろう……なっ!」

フサギコが地面に突き刺した腕を持ち上げるのに合わせて、
巨大な土の壁がオサムの眼前に立ち上がった。

【+  】ゞ゚) 「膂力だけでこれだけの現象を引き起こしますか」

('、`*川 「観察している余裕はないよ」

上下左右から迫る連続した斬撃。
その首を刈らんと風を切り裂く。

【+  】ゞ゚) 「っと……ウクータ!」

黒き泥壁を発生させる呪術。
ペニサスの一撃であればそれで防ぎきれるとの判断であった。

('、`*川 「甘いねッ!」

斬撃は途切れることなく、オサムの全身を狙う。
それ故に、オサムはその全てに対応しなければならず、
呪術の壁を広範囲に薄く拡げていく。

攻撃の薄い部分はただ弾かれるだけに終わり、濃い部分は泥壁の呪術を削る。
止まることのない連撃の最中に、フサギコは目の前の岩に向けて拳を振り抜く。

ミ,,゚Д゚彡 「らぁっ!」

砲撃のような音と共に飛び散ったのは、巨岩の弾丸。
目の前の脅威を理解したオサムは、すぐに新たな呪術を構成する。

【+  】ゞ゚) 「ウクータ・ダブーレ!!」

彼の周囲を覆った黒い液体に高速で飛来した岩が激しくぶつかり、その殆どを砕いた。
全てを防ぐことは叶わず、咄嗟に急所を庇った右腕は血に塗れていた。

【+  】ゞ゚) 「なるほど……」

オサムが首元に付けていた黒色の宝石が砕け、地面に散らばる。

('、`*川 「これでその厄介な術式は使えないやろ?」

ミ,,゚Д゚彡 「俺らがただお前らの侵攻を黙って見ていたわけがない。
       今日この日の為に、多くの仲間がその命を散らせた。
       呪術師の弱点を知るためにだ……」

('、`*川 「あんたは一人でよく戦った。それも今日で終わりや」

突如として真横に現たペニサスの爪が、オサムの右頬を抉る。

【+  】ゞ゚) 「ぐっ……」

('、`*川 「立っとれんやろ」

オサムの視界は絵の具をかき混ぜたかのように歪む。
到底立っていることなどできず、背後の木に寄りかかって身体を支えた。
その隙を見逃すはずもなく、丸太のような腕がオサムの胸を貫く。

【+  】ゞ゚) 「かっぁ……っぁ……!!」

樹木ごと貫いた爪は、的確にオサムの心臓を抉りだしていた。
溢れ出る血液はすぐに途切れ、鼓動は次第に弱くなり、数秒後に完全に停止した。
亡骸を打ち捨て、最強の夫婦は目の前の残党を睨む。

「な、なにをしている! あいつらを殺せば褒章は弾むぞ!」

ミ,,゚Д゚彡 「黙れッ!」

「ひぃっ……はっ……お、お前らなんかこれから来る増援が……」

男は後ろを振り向く。
既に戦闘が始まってからそれなりの時間が経過しているが、未だに誰も現れない。
第二陣、第三陣と続く波状攻撃で村を滅ぼす予定であったにもかかわらず。

ミ,,゚Д゚彡 「どうした、増援が来るのだろ?」

「あ……あぁ……」

('、`*川 「考えてみな。あんたたちが暴れている間、私たちがただ指を咥えて見ていると思ったか?」

「そ、そんな……」

ミ,,゚Д゚彡 「援軍は来ない。呪われた者達よ。この森に眠れ」

「な、なんでお前……」

('、`*;川 「あんた! 後ろ!!」

ミ;,,゚Д゚彡 「ぐっ……!?」

【+  】ゞ゚) 「失礼しました。少しばかり気を失っていたようです」

胸に大穴を開けたままのオサムは、そんなことは意にも介さないかのように頭を抑えていた。

【+  】ゞ゚) 「まだ少し頭痛がしますが……概ね成功といってもいいでしょう」

('、`*;川 「何が……」

【+  】ゞ゚) 「呪術ですよ。私の死後発動するようにしていました」

ミ;,,゚Д゚彡 「生き返ったということか? 馬鹿な。いくら呪術であろうとそんなことはありえない」

【+  】ゞ゚) 「正確には、死ぬ直前に魂を抜きだす術なのですが、そんなことはどうでもいいでしょう」

ミ,,゚Д゚彡 「そうだな。どうせその宝石のどれかを壊せば死ぬのだろう?」

上半身に直接埋め込まれた数多くの黒い宝石。
そのどれもが、呪術の発動を示す赤黒い光を放つ。

('、`*川 「だったらすぐに終わるさ」

オサムの肩口に深々と突き刺さったペニサスの牙。
その色が毒々しい紫色に変わる。

('、`*川 「っ!!」

飛び下がったペニサス。
その頬には深い亀裂が入っていた。

(メ ゞ゚) 「よく気付きましたね。獣の勘ですか」

('、`*川 「女の勘だよ」

ミ#,,゚Д゚彡 「おらああぁっ!!」

不意を突いた一撃は、オサムに直撃したかに思えた。
大地をも砕くような拳は、地面から生えた黒き棘に縫い付けられて動かない。

ミ;,,゚Д゚彡 「ぐぅっ……」

フサギコは苦痛に顔を歪める。

【+  】ゞ゚) 「ムイーバ……クウェーリ!!」

オサムを中心に弾ける様に広がった漆黒の棘は、
防御も回避も許さない勢いで獣使いの二人を飲み込んだ。

【+  】ゞ゚) 「……やはり強いですね」

('、`*;川 「あんたっ!!!」

ミ;,, Д゚彡 「はっ……はぁっ……化け物が……」

闇を砕いて現れたのは血だらけのフサギコと、その両腕に抱えられて無傷のペニサス。
致命傷に思われた男の傷は驚くべき速度で修復されていく。

【+  】ゞ゚) 「特異能力ですか」

ミ#,,゚Д゚彡 「ぐぉおおおぉおおおおお!!!」

大地すらも揺るがすような雄たけびを上げ、フサギコはその剛腕を振るう。
木々を抉るほどの強烈な衝撃波は、オサムの前で弾けて消えた。

【+  】ゞ゚) 「ポイゾン」

腰に巻いたベルトにぶら下がった複数の宝石。
そのうちの一つがひび割れ、地面に落ちた。

('、`*川 「そんな呪術……っ!?」

【+  】ゞ゚) 「残念ですが、あなた方ですらもう私の敵ではありません」

ミ;,,゚Д゚彡 「なに……を……」

('、`*;川 「っ……!」

【+  】ゞ゚) 「無色無臭の猛毒。
         たとえあなた方英雄であろうと、生物である以上抗うことは出来ません」

膝をついた獣使いの夫婦。
その眼の焦点は虚ろになり、息は荒々しい。

('、`*川 「あ……」

ミ,, Д 彡 「く……そ……」

【+  】ゞ゚) 「抵抗すら許さず、一方的に殺戮を行う。それこそが呪術の神髄」

ミ,,゚Д゚彡 「ぐっ……」

震える膝で立ち上がったフサギコ。
その眼は呪術の毒素で黒く染まり、何も見えていない。
それでも、目の前にいるオサムの存在を確かに見据えていた。

ミ,,゚Д゚彡 「た……のむ……子……手を……出すな……」

【+  】ゞ゚) 「約束しましょう。もとより、戦いに赴く者以外を殺めるつもりはありません」

ミ,, Д 彡 「あぁ……」

フサギコはその重たい身体を引きずるように動かす。
息絶えて横たわるその妻の元へ。一歩ずつ。

息も絶え絶えな女性に元まであと一歩のところで、
ふらつく彼の横っ腹を前触れなく貫いた黒い光。
その衝撃で吹き飛ばされ、フサギコは動かなくなった。

「はっ……ははは、びびらせやがって! このゴミが!」

指輪に嵌め込まれた宝石の持つ呪術を死体に向けて何度も放ち、
男は執拗にに戦士の亡骸を痛めつける。

「センデル! あ、あははは! センデル!!」

黒き雷が何度も二人の身体を焼く。
焦げた臭いが森の中へと充満し始め、幾人かの味方が顔色を変えてその場を去って行った。

【+  】ゞ゚) 「それでは、私は奥に向かいますので」

「お前、部隊長の俺を置いていくのか?」

【+  】ゞ゚) 「戦闘があるかもしれませんので、ついて来るのでしたらお気をつけて」

「生意気な。お前も苦戦させられたんだ。
 こいつらに仕返ししなくていいのか?」

【+  】ゞ゚) 「死者を甚振る趣味はありませんので。それでは失礼します」

オサムは他の兵を残して城門をくぐり、村の中心へと駆けだした。


>2


「殺せ」

命じられたオサムは、目の前にいる泣きじゃくる幼子を見つめる。
先刻、この子供の両親だと思える獣使いを無残に殺害した司令官の男は、
下卑た笑みを浮かべながら命令を下した。

オサムは隠しもせずに溜息を吐き、呪術の宝石を懐に収める。

【+  】ゞ゚) 「その必要はないでしょう」

もはや抵抗する獣使いはおらず、僅かな生き残りは殆どが逃げ出していた。
敵国で最強と呼ばれた獣使いの夫婦を殺し、味方内は既に戦勝ムードが漂っている。
これ以上の殺戮は不要だと告げたオサムに対し、司令官は怒りにかを歪める。

「何?」

【+  】ゞ゚) 「既に我が軍の勝利は確定的です。これ以上無駄な犠牲を出す必要はありません」

「貴様、それでも兵士か。上官の命令を聞け」

【+  】ゞ゚) 「はぁ……」

自身よりも弱く、無能な上官。彼にとって戦場で最も邪魔な存在であった。
悪戯な殺生を好み、女を見つけては容赦なく凌辱し、子供の肉を喰らう下種。
この男が配属されてから、彼の所属していた軍隊は無法者の集団となり果てた。

「なんだ、文句があるのか?」

他の隊には鬼畜悪魔の集団と忌み嫌われ、
味方からも石を投げられるような日々に男はうんざりとしていた。
だからこそ、これは神が与えてくれた天啓なのだろうと、男は確信をした。

【+  】ゞ゚) 「……文句、無いとお思いですか」

「生意気な奴め。前々から気にくわなかったんだ。
 その力、戦争が終わった後も役に立つと思うなよ」

【+  】ゞ゚) 「思っていませんよ。平時に私のような力を持つ者がどう扱われるか、わかっているつもりです」

「だったら、さっさとそのガキを痛めつけて殺せ。
 そうすれば、この私が貴様の使い途に口をきいてやろう」

【+  】ゞ゚) 「有難い話ですね」

オサムの持つ宝石が呪術を放つために鈍く光る。

「オサムっ……なにをっ!」

彼の影から現れた黒い腕が、上官の首を掴み持ち上げる。
足をばたつかせて抵抗するも、その程度で逃げることは叶わない。
彼我の実力差は埋めようがないほどに大きく、
オサムはその力を緩めてやるつもりなど毛頭なかった。

「かっ……!」

司令官だった男はすぐに動かなくなった。
その死骸を陰から出てきている黒い腕が完全に包み込む。
そのまま影の中に沈んでいき、その場には何も残っていなかった。

【+  】ゞ゚) 「すぐに我が国の軍隊がここまで攻め込んでくるでしょう。
         生き延びたいのであれば、泣くのをやめこのまま奥へと走り続けなさい。
         包囲網が完成する前に逃げ切れるかもしれません」

「っ……うぅ……父さん……母さん……」

【+  】ゞ゚) 「私はもう行きます。それでは」

オサムは子供を残したまま部屋を出た。
前方の暗闇の中から聞こえる闘いの音は、少なくなっている。

【+  】ゞ゚) 「これで主要な村は殆ど潰しましたが……」

暗がりを駆け抜けてきたのは同期の男。
共に戦場を駆け抜けてきた信頼できる味方であった。

「おお、オサムか。もうこんなところまで攻め込んでいたとは。
 それで、部隊長は何処だ?」

【+  】ゞ゚) 「知りません」

「そうか……。残党どもを逃がさない様にしている。手が空いているなら手伝ってくれ」

【+  】ゞ゚) 「もうこれ以上命を奪う必要はないでしょう」

「残党が抵抗しないとも限らない。それに部隊長命だ。子供一人残すなと」

【+  】ゞ゚) 「その部隊長が行方不明ですからね。後を継ぐべきは副長であるあなただと思いますが」

「お前……まさか……」

【+  】ゞ゚) 「どうしますか?」

有無を言わせないオサムの気迫。
彼がその眼をしたときの覚悟の重さは、長く共に戦ってきた友人である男がよくわかっていた。
この戦闘に出る前にも部隊長に向けていた同様の眼を見ていたからだ。
愚かな部隊長はそれにすら気づくことはなかったが。

「逃げるものは追わないようにしよう。それでいいか」

【+  】ゞ゚) 「十分です」

「よし、聞こえたな! お前たち! 部隊長不明により今より指揮は俺が執る。
 投降する者は殺すな。逃げるものは追うな。
 これを破った者は厳罰に処す。以上だ!」

森の中からの返事は渋々と言ったものであったが、多くは従うことを決めた。
それからしばらくして、呪術師たちは決して広くはない村を包囲し終えた。
もはや抵抗をするものは誰もいない。

呪術師たちは勝鬨を好き勝手に上げ、廃材を用いて巨大な火をつける。
それは戦勝を告げる報せであり、死者を弔う呪術師流の儀式。
死んだ者たちは敵味方関係なく火にくべられた。

「オサム」

【+  】ゞ゚) 「なんでしょうか」

その炎の揺らめきがかろうじて届く程度に離れた場所、
今や住む者のいない廃屋の屋根に二人は座っていた。
オサムは血のように紅いワインの注がれたグラスを一息で飲み干す。
隣にいた男はグラスを持ったまま、欠けた月を見上げていた。

「これで戦は終わりだろうか」

【+  】ゞ゚) 「表面上はそうでしょうね」

獣の使い手の拠点は、呪術師側が把握している限りほぼ壊滅であり、
強力な指導者であった二人の使い手もオサムの前に倒れた。
彼らに反撃するだけの余裕はもうない。

【+  】ゞ゚) 「ですが、抵抗は続くでしょう。統治した村々を完全に取り込むにはまだ時間がかかります」

「だろうなぁ……他の隊に連絡しなければな。結局、部隊長は行方不明のままか」

【+  】ゞ゚) 「そのようですね」

「お前……いや、なんでもない」

【+  】ゞ゚) 「彼らは村を、一族を護るために誇り高く戦ったのです。
         私が今まで戦った中でも、最も強く気高かった。
         その彼らが護ろうとしたものは、遊びで失わせていいものではないでしょう」

「…………」

【+  】ゞ゚) 「少し喋りすぎたみたいですね。今夜の月は少々私には毒なようです」

「ああ、そうだな」

【+  】ゞ゚) 「それでは、私は一足先に国へ戻ることにします」

「部隊を離れるという事か? だが、まだ戦後処理があるぞ」

【+  】ゞ゚) 「そういう事はお任せいたします」

「大変です! 副長! すぐに来てください!」

「どうした?」

下からの呼びかけに応じて飛び降りた男。
オサムもまたその後を追った。
案内された場所は、オサムが攻め込んだ場所からさらに奥へ行ったところ。
包囲網を築いていたはずの数人が、無残な死体となって放置されていた。

「これは……」

腕や脚、顔などの一部分が何かに食いちぎられたかのように消滅していた。
オサムと比べれば実力は劣るが、それでも並みの敵に殺されるようなレベルではない。
それが十人も。

【+  】ゞ゚) 「獣遣いの技にも似ていますが……」

オサムの戦った二人の獣遣い。
彼らであればその惨状を引き起こすことは可能であろう。
だが、通常の獣遣いによる仕業だと考えるには、あまりにも荒々しかった。

「残党がまだいたのか……?」

【+  】ゞ゚) 「彼らも弔ってあげましょう。どのみちこの暴れ方だと、もう村の近くにはいないでしょうから」

周囲の木々をも深く抉った傷跡は、森の奥へ一直線に向かっていた。

【+  】ゞ゚) 「とんでもないことが起きるかもしれませんね……」

オサムの呟きは誰に聞かれることも無く、闇に消えていった。


>3


「まったく、ひどい出迎えですね」

手紙に呼び出されたオサムを待ち受けていたのは、雨霰と降り注ぐ魔術。
咄嗟に発した盾の呪術は一つ残らず砕かれた。。

【+  】ゞ゚) 「これだけの呪魂を作るのに半日もかかったのですが……」

オサムのぼやきは届かない。
魔術師の男は掲げたままの杖に新たな魔力を注ぎ始めた。

【+  】ゞ゚) 「そちらがその気なのでしたら、躊躇うことはありませんね」

オサムは小指の指輪を外し、それを握りつぶした。
拳の内から滴る闇は、明確な殺意をブレンドした呪術。
光が次第に大きくなり形を得ようとした時、魔術師は動いた。

杖を振り、生み出した魔術が象ったのは大蛇。
発動する間すら与えないかの如く、魔術師の放った無誘導の魔力の奔流は、
オサムの周囲を埋め尽くした。

【+  】ゞ゚) 「盾の呪術が無くても防ぐ術はいくらでもあります。ヴォルテクス!」

オサムを中心として突如現れた黒き渦。
その流れに巻き込まれた魔術は、魔力が切れるまでただ回り続けた。

【+  】ゞ゚) 「魔術と呪術、どちらが優れているかという議論を持ちかける気はありませんが、
   少なくとも発生速度において呪術が後れを取ることはありません」

オサムは中指の指輪を魔術師に向けて放り投げた。
緩やかな放物線を描いて飛んだ小さな宝石は、魔術師の足元に転がった。

「……!」

【+  】ゞ゚) 「コンプレシオン」

指輪を中心にして、半径数メートルが完全に消滅。
その場に立っていた魔術師は跡形も無い。

それだけでなく、抉り取られたはずの平原すら元通りになっていた。

【+  】ゞ゚) 「……そういうことですか」

突然に開けた視界の中で、優雅なティータイムを楽しむ一組の男女。
静寂を破ったのは数年前に突然オサムを訪ねてきた魔術師。

('A`) 「座れよ。お前が一番だ」

【+  】ゞ゚) 「そうは見えないのですが」

川 ゚ -゚) 「クール・スノウ」

我関せずと席に座って本を読み続ける少女は、
オサムを横目で見て一言だけ名乗ると、意識を本に戻した。
文字の読み書きを習っていないオサムには、その本のタイトルはわからず、
ドクオへ戸惑いの眼差しを向ける。

('A`) 「気にしないでくれ。彼女は俺が連れてきた。
   だから自分の足で来たのはお前が最初で間違いない」

【+  】ゞ゚) 「いくつかお聞きしたいことがあるのですが、構わないでしょうか」

('A`) 「ああ。どうせ時間はまだあるんだ」

【+  】ゞ゚) 「この最果ての地と呼ばれる場所で、手紙の魔術に選ばれた私たちが戦うその……。
         悪魔……ですか、正直信じられませんが。
         一体どういう理屈なんですか?」

('A`) 「俺が知っていることを全部話すのは手間だな。
     全員揃ったときにどうせ説明しないといけないだろうしな。
     とりあえずまぁ、今言えるのは数千年前から戦い続けてきたってことだけだ」

【+  】ゞ゚) 「数千年……」

('A`) 「老樹ロマネスク。聞いたことはあるか?」

【+  】ゞ゚) 「ええ、噂程度ですが……」

精霊の森に住む精霊術師の祖。
オサムとてその名前程度は聞いたことがあった。

('A`) 「あいつは何度も戦いに赴いているからな。
     数年前に話を聞きに行ったが、今回も選ばれている可能性が高い」

【+  】ゞ゚) 「まさか……。」

('A`) 「信じられないのも無理はないがな」

【+  】ゞ゚) 「いえ、嘘を吐くメリットなどないでしょう。
         あの魔術も、私が調べた限りおかしな点はありませんでした。
         ですが、なぜ五百年に一度なんでしょうか」

('A`) 「予想はつくが、それもまた全員揃ってにしよう。
     俺からの提案もあるしな」

【+  】ゞ゚) 「今は待てと言うことですか。それでは最後に一つ。
         その少女は、まさか戦うわけではないのでしょう?」

('A`) 「いや、彼女も戦う」

【+  】ゞ゚) 「えっ!?」

オサムの驚いた声に対し、不愉快そうに眉を顰めるクール。
読みかけの本に付箋を挟んで机に置くと、立ち上がってオサムの目の前に立つ。

川 ゚ -゚) 「女が戦場に立つなとでもいうつもりか?」

【+  】ゞ゚) 「いえ、そのつもりはありませんが……」

川 ゚ -゚) 「確かに若くて可憐、華奢で色白な美少女が、
      戦うための力を持つかと問われれば答えはノーだろう。
      神様はどうやらまた、禁断の林檎を地上に落としてしまったらしい」

【+  】ゞ゚) 「そこまで言ってませんけどね」

クールが自らの胸に手を当てると、太陽のように暖かな光が彼女の手を覆う。
その片鱗からでさえ、途轍もない魔力の塊が引き出されようとしていることが容易に理解できた。

川 ゚ -゚) 「ドクオ、いいか?」

('A`) 「駄目に決まってるだろ」

川 ゚ -゚) 「そうか……ならこれで私の実力を証明するしかないな」

腰に結んだ剣の刀身を晒す。流れる様な抜刀の動作。
それを見た者は、彼女の剣士としての力量がその道に進んでなくともわかる。
両手に持って高く掲げた白き刃は、太陽の光を反射して輝く。

【+  】ゞ゚) 「正直、先程ので十分なのですが……」

川 ゚ -゚) 「私が納得出来てないので」

クールが縦に振り下ろした剣。その斬撃の軌道に乗って、
刀身の数千倍はあろうかという魔力の斬撃が遠方の山を切り裂いた。

突然の大災害に襲われた鳥たちは、囀りながら一斉に空へ飛び立つ。
なだらかな峰を縦に分断する傷跡は十を超え、距離による威力減衰は殆ど無い。

【+  】ゞ゚) 「……」

川 ゚ -゚) 「まだ文句はあるか?」

【+  】ゞ゚) 「ええ、自然が可哀想です」

川 ゚ -゚) 「そうだな。ドクオ、治してあげたらどうだ」

('A`) 「やれやれ……」

ドクオは杖に魔力を込め、魔術として発動させる。
瞬く間に数分前の姿へと再生し、自然は落ち着きを取り戻す。

【+  】ゞ゚) 「想像以上でした」

川 ゚ -゚) 「わかればいい」

('A`) 「この通り、性格に難はあるんだが実力は確かだ」

【+  】ゞ゚) 「成程、背中を任せるのは少々不安ですが……。
         それで、残りの仲間はいつ頃現れるんですか?」

('A`) 「わからん。明日来るかもしれないし、直前に来るかもしれない。
     来ない可能性だってある」

【+  】ゞ゚) 「世界を救おうというのに、恐ろしく適当な魔術ですね」

('A`) 「それで今までうまく行ってたんだから仕方がないさ。
     歴代の魔術師たちも手紙の魔術に手を加えないことを不文律としていたみたいだしな。
     俺は幾つかを破ったが」

川 ゚ -゚) 「来るさ。ドクオはそのために準備をしてきた」

('A`) 「まぁ、そうだ。手紙の魔術を発動させる前の話だ。
     俺は各種族の中で最も強い力を持つ者達に会っていた」

【+  】ゞ゚) 「私とクール、そしてロマネスクの他にもですか」

('A`) 「ああ。だが、うまくはいかなかった」

【+  】ゞ゚) 「どういうことですか」

('A`) 「老龍ディオードは老いて右も左もわかっていない。
     眠り続ける庭園の姫は何をしても起きなかった。
     殺戮機械は海際に打ち捨てられて錆びていたし、天空城は鎖国状態。
     実際に会えたのは両手で足りる」

【+  】ゞ゚) 「私でも聞いたことある方がいますね」

('A`) 「有名人みたいなものだからな。とにかく、もう一人か二人来るまでは好きに過ごしてくれ。
     この場所から離れても構わない」

【+  】ゞ゚) 「そうですね、少し呪術に用いる宝石を探してきます。
         呼びかけて頂ければ戻ってくるようにしましょう」

('A`) 「それならこれを持っていけ」

ドクオが取り出したのは金属のリング。

【+  】ゞ゚) 「連絡用ですか」

('A`) 「用があればそちらからも連絡が取れるようになっている。
     呪術師であっても魔力の込め方くらいはわかるだろ?」

【+  】ゞ゚) 「ええ、ではお借りすることにします。
         それでは、また後で」

('A`) 「ああ」

それを受け取った後、オサムは即座に姿を消した。


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